こんにちは。BeBRAVE.S代表の明正明美(みょうしょうあけみ)です。
きょうは「読解力」についてお話をします。
みなさんは、数学者:新井紀子さんの著書『AI(エーアイ) VS 教科書が読めない子どもたち』、『AI(エーアイ)に負けない子どもを育てる』をご存じですか?
なかなか衝撃的な内容です。
新井さんは読解力を測るリーディングスキルテスト(RST)を開発した人です。
文の構造を正しく把握する。読解力の最も基礎となる能力。
代名詞が何を指しているかを正しく認識する。
辞書の定義を用いて新しい語彙とその用法を獲得できる。
理数的な定義を理解し、その用法を獲得できる。
など、7分類に分けられた問題が出され、正答率によって読解力を測ります。
正答率は中学生が25%、一流企業の社員が30%ということです。
以下のような例題があります。
【問題】
天の川銀河の中心には、太陽の400万倍程度の質量を持つブラックホールがあると推定されている。
この文脈において、以下の文中に当てはまる最も適当なものを選択肢の中から選びなさい。
天の川銀河の中心にあると推定されているのは( )である。
1 天の川 2 銀河 3 ブラックホール 4 太陽
(答えは最後に書きますね)
こんなかんじでたくさんの問題があります。
さて、新井紀子さんは現代の子どもたちはAIに勝てない、AI程度の読解力しかないと危惧しています。
AIに「この近くのまずい中華料理屋」を聞くと、「おいしい中華料理屋」を答えるし、「中華料理屋じゃない店」を聞いても、同じ回答しかなく、AIには「まずい」とか「~じゃない」とかが認識できないようです。
AIの読解力や文脈を理解する能力はけっこう低く、AIにできないことを人間ができてこそAIに勝てるのに、AI程度の読解力、もしくはそれ以下の読解力しかない子どもや人がけっこう多いというのが新井さんの危機感です。
テクノロジーは一気にではなく、徐々に進化するため、10年後には人間がしなくていい状況になり、多くの仕事でかかわる人間が減っていくということです。
巷でよく言われている、なくなる仕事、なくならない仕事というのが今の時点ではっきりわかるわけではないのですね。
新井さんが強調しているのが次のことです。
必要なのは自学自習力。
人生で最も大事。
でも、少子化や受験産業の影響による今の勉強法では、自学自習できる子が少なく、これが大きな問題とのこと。
学校や塾で常に誰かに教えてもらう環境で、18歳までに自学自習力がつかないまま大学に入り、SNSで単位の取り方を見て卒業し、就職する。
自分ではうまくやったつもりでも、最も脆弱な人材として世に出てしまう。
じゃあ、どうしたらいいのか。
実体験を積んで、自学自習力を身につけるしかない。
そして、ここでいう読解力とは文学などの読書ではなく、教科書や新聞など図表を含めた言語化された情報を正確に読む力を指すので(契約書や仕様書、約款、マニュアル、メールでの指示などです)、単語だけを拾う「AI読み」で分かったつもりではなく、日ごろからゆっくり正しく読む力を鍛えることがつらくても大切。
ということです。
実際、単語拾い読みだと、まったく異なる内容なのに、同じ単語がこれだけ出てるから同じ内容に違いないと思い込み、ゆっくり読んでも違いに気づかないということがあります。
仕事では、実は、ほんとうにこれが多いのです。
いわゆる速読は単語を拾いますが、実はこのやり方は、その分野や内容にある程度精通していると可能なのですが、そうでないと誤った理解をしてしまいます。
効率だけを求めるとかえって非効率になってしまうってことみたいです。
急がば回れ、かな?
最後に。
ジョブズは自分の子どもにはiPadもスマホも与えなかったそうです。
作り出す側はAIを必要としない、ということです。
AIを使うか、AIに使われるか、自分次第ってことです。
でも先のことなんて何がわかるというのか、とも思います。
AIに勝つか負けるかなんて、今の時点でわかるはずもありません。
ただ、読解力はないよりはあったほうが断然困りません。
例題の答えは、3 ブラックホールです
※ RSTテストには批判もあります。
明日誠一(みょうが せいいち)さんの論文がネット上にありましたので参考までに。
http://pssj.info/program_ver1/program_data_ver1/53/resume/PSSJ-53(2020)_resume_B10_MYOGA.pdf
file:///C:/Users/81901/Pictures/%E3%82%AD%E3%83%A1%E3%83%84/001.pdf
そもそも「読解力」とは何か?という問いです。