奨学金を借りる前に制度を理解し、なんのためにお金を借りて進学するのか考えよう。

こんにちは。BeBRAVE.S代表の明正明美(みょうしょうあけみ)です。

きょうは、「奨学金を借りてなぜ進学するのか」ということを中心に、奨学金についてお話をします。

ワーキングマザーのみなさんのなかには、すでに10代後半のお子さんがいらしゃって、奨学金について相当詳しい方もいらしゃるでしょうし、まだまだ先のことと思っていらしゃる方もいると思います。

すでに奨学金を検討されている方も、今後のために勉強しておきたいという方も、参考として読んでいただけたらと思います。

私自身は奨学金を利用したことは一度もありません。

理由はいくつかあります。

私が高校を卒業した1989年(平成元年)の大学進学率は25%ほどです。今の半分ぐらいです。

(今は50%を超えているし、短大や専門学校、各種学校を含めると7~8割の人が進学をします)

なので、「大学へ行かない」という選択は十分あり得ました。もちろん、大学の数自体今より全然少なかったのです。

(国公立120、私立380ぐらいの計500ほど)(今は計780ほどで1.5倍(少子化は半端ないのにですよ…)、8割が私立です)

そして田舎でした。県内や近隣県にはあまり大学がなく、都会まで出なきゃいないので、まだその当時は国公立と私立で学費の格差が大きかったので、お金がないと都会には行けないし、頭がよくないとそこそこの価格の国公立へは行けなかったのです。

なによりも、私は勉強がきらいで苦手で、からっきし成績がふるいませんでした。

「奨学金を借りてまで進学する」という考えはどこをどうふっても出てきません。

このようなわけで学校に関する借金経験はゼロです。

30代なかごろで介護施設に就職したころから、周囲で奨学金の話をちらほら聞くようになりました。

「〇〇君は、大学の時の奨学金の返済がまだ何百万もあるのに、介護の仕事をやめて、今度は理学療法士の学校に行くらしい…お金どうするんやろ…」

「うちの嫁、奨学金付きでうちに来たわ。いまだに返してるわ。生活費とか全然ないらしい。子どもどころじゃないわ」

「うちの子、進学したい言うのやけど、県外の私大なんて行かすお金ないわ。奨学金借りようか…」

こんなかんじです。

私はかなり心配になりました。

介護職の給与の低さは十分わかっていましたし、体力仕事なので年齢と共にきつくなります。昇給だってほとんどありません。

お子さんを県外の私大に入れるお金はみなないのです。

そして、奨学金を借りて進学しても、返せるだけの給与をもらえる職種は世の中全体でかなり限られてきていたのです。

何よりも、奨学金は本人が借りるのであり、親戚など親以外に保証人が必要なのです。もちろん連帯保証人です。(機関保証は10~30万円必要です)

正直なところ、あまり勉強ができず、好きでもないのに大きな借金を背負ってまで進学するのは後々本人が苦しむことになり、かわいそうだし、あまりにもリスクが高いと思っていました。

私がぼんやり、自分の周囲だけを眺めて生きているうちに、世の中はすっかり「大学へ行くのが当たり前」「短大がいつの間にか4年制大学になって」「奨学金を借りて大学へ行く」そんな時代になっていたのです。

AO入学とかいうものがけっこう主流であることも知りました。

40代で社会保険労務士として企業の担当者と話すなかで、笑いたくなるほど(泣きたくなるほど?)「学歴主義」が浸透していることに気づきました。

8割近くが高校卒業後に進学する時代にありながらです。

学校によってではなく、最終学歴によって初任給やその後の昇給が決まるのです。

あり得ないけれど、極端なことを言えば、東大卒も三流四流五流大学卒も(Fランク大学というそうです。入試難易度が低く、偏差値の算出が不可能な大学です)同じ大卒給与で、進学校卒業でも高卒なら高卒給与なのです。意外に思われるかもしれませんが、進学校を卒業して大学に進学しない人がいますし、専門学校や各種学校に行く人もいます。特に女性は。勉強についていけなくて中退した人も多いと思います。

私自身、30歳で保育士養成校(学費がピアノの月謝よりも安い公立でした)を卒業したのが最終学歴でしたので、何度も学歴重視偏向を指摘し、職務能力評価制度の構築を提案しましたが、担当者が有名校出身者でもそうでなくても、なかなか受け入れてもらえませんでした。(作るのが難しいのが一番の理由ですが…)

人の能力を評価するというのは非常に難しいことなので、学歴主義はある程度理解はできるのです。

でも、それなら大学、学部、学業成績をみないといけません。

ところがここは見ない企業が多いのです。

AO入学かどうかは見てるのでしょうか…

アルバイトやボランティア活動など、学業以外のもので「人間力」とやらを見ているようなのです。

このような企業の実態をみると、「奨学金を借りてなぜ進学するのか」という意味がわからなくなるのです。

「奨学金を借りてまで進学するのは、そのほうがいい企業に入っていい給与がもらえて、借金も返せるので、結局借りてでも大学へ行ったほうが得」だからなのですが、現実は「そうではない」のです。学歴差別をしたところで給与額そのものが減っているのです。

それでも大きな借金を背負って進学するのはなぜでしょうか。

奨学金アドバイザー:久米忠史さんによれば、親も学生本人も奨学金のリスクをあまりにも知らない、奨学金そのものをまったくわかっていない状態で、高校の先生も同じくわかっていない状態で、あまりにも安易に「奨学金を借りて進学している」からだと言います。(どんなお金、誰のお金だろうと払いさえすれば、大学はあるので行けるのです)

そして、奨学金の受益者は学生だけではなく、その存在がなければ存続できない増えすぎた大学でもあり、何を学ぶのか、何を教えるのか、何のために学ぶのかといった視点が完全に欠落しているということです。

『奨学金 借りる?借りない?見極めガイド』は100以上のQ&Aからなり、かなり詳細に奨学金を説明しています。

実態は学生ローンであること。

未成年者に無審査で何百万の融資がなされていること。

親としてもっとも注意すべきは保証制度であること。

などです。

久米さんは同じような内容で2020年度版も書いています。

他に、大学進学のための返さなくてよい奨学金

という、本もあります。

サラ金と同じじゃないかと声高に批判したり、むやみに恐れたりしないで、奨学金という制度を知ること、そして、奨学金を借りてなぜ進学するのか(学びたいのか、就職に有利だからか、キャンパスライフを楽しみたいのか、学歴を作りたいのか)を親子で考える、そのことがスタートです。

こんな本もありますよ。

大学の夢あきらめないで 進学にまつわるお金の話

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