尻馬に乗って正義の拳を振り上げて、どこに打ち下ろすつもりなのでしょうか。

こんにちは。BeBRAVE.Sビーブレイブエスの明正明美(みょうしょうあけみ)です。

きょうは少しだけ政治のことを話します。

ロシアによるウクライナへの攻撃が連日メディアで取り上げられています。

先日小6の娘から「どうしてロシアとウクライナは戦争をしているの?」と聞かれました。

私はきちんと説明することができませんでした。

メディアが伝えるように、「ロシアがウクライナを支配するために攻撃している」と答えればよかったのかもしれませんが、できませんでした。

結局「わからない」という、大人としてはなはだ頼りない回答となってしまいました。

言い訳として、少し昔の話をしたいと思います。

私が高校生だった頃、現在のロシア連邦はまだなく、ソビエト社会主義共和国連邦(略してソ連と呼んでいました)という国でした。繁華街にロシア料理の店があり、私はよくひとりで食べに行っていました。

ソ連以前は皇帝が支配するロシア帝国でしたが、1917年の革命によって社会主義の国になりました。ソ連になってもレストランで出される料理はロシア料理なのです。

ビーツという赤かぶを煮込んだボルシチというスープが大好きでした。サワークリーム(クリームチーズみたいなかんじです)が入っていてとってもおいしかったのです。このボルシチとピロシキ(揚げた肉入りパン)、黒パンのセットがお気に入りでした。

ボルシチにはウクライナ風という形容詞がついていました。他にもキエフ風チキン(鶏むね肉にバターを挟んでロールして揚げたもの)、ウズベク風辛口ピラフなどがありました。

当時こういった料理をソ連の地方料理なのだと思っていました。当時はウクライナもウズベキスタンもソ連の領土で連邦のひとつでしたから(自治権は表向きあります)当たらずとも遠からずと思います。

その後ペレストロイカという言葉が出てきたかと思いきや、あっという間にソ連は崩壊し、他の社会主義共和国もことごとくその体制が崩壊しました。東西に分かれていたドイツは統一され、ベルリンの壁が打ち壊されるさまは世界中を感動に包み込みました。

東西冷戦が終わったのです。

でもその後信じられないような殺戮が始まりました。民族浄化という殺戮が、パンドラの箱を開けたかのように一気に広がりました。

ボスニアで紛争が起きたとき、イタリアに短期の語学留学をしていた私は、テレビの画面を見ても何が起きたのか、どうしてそんなことが起きたのかちっともわかりませんでした。(日本で日本語の報道を聞いていてもわからなかったと思いますが)

それでも知りたくてイタリアの新聞を辞書を引きながら読んでみましたが、残念ながらわかりませんでした。ただ、紛争の当事者たちを愚かであると断じていることだけはわかりました。後になって、多民族が一つの連邦国家を構成していたのが、ソ連崩壊によってみなが民族ごとに独立をはかるべく、他の民族を攻撃し殺戮していったということがわかりました。

この地域の複雑な民族関係・歴史は単一民族からなる日本人(アイヌ民族のことを黙殺してきたので)にはとても理解できません。

今回のロシアによるウクライナ侵攻もテレビや新聞の報道だけをどれだけ熱心に追っていてもとうてい理解はできないと思うのです。日本のメディアは現地に駐在員は置いていても独自の調査はしていないように思います。かつて戦時中のメディアが大本営発表をただ流していただけなのと同様に(言い訳はいくらでもありますが事実は事実です)、アメリカやEU諸国の報道をそのまま流しているだけのように思います。

20年前、世界は同時多発テロの報復として、アフガニスタンの何の罪もない民間人を、空爆で殲滅させました。

その世界が今、ウクライナを攻撃するロシアに正義の鉄拳を打ち下ろそうとしています。

日本は尻馬に乗って正義を叫んでいます。ロシア(プーチン)に正義がないことは確かですが、だからといってロシア以外に正義があるとは言えません。

きょうたまたまテレビでウクライナの女性がインタビューに答える言葉が耳に入りました。

誰が勝ってもどこが支配してもそんなことはどうでもいい。子どもたちが安全に暮らすことができればいい。

ほんとうにそうだと思いました。

振り上げた正義の拳は民族人種を問わず、女性や子どもに打ち下ろされるのです。

ロシアの暴挙を許すな!と憤激してみせ、正義を叫び、欧米と足並みをそろえると声明を出すのはけっこうなことです。

それをそのまま垂れ流すのもけっこうですが、新聞は生活必需品という主張の下、軽減税率の対象となっています。大本営発表を流すだけなら必需品どころか娯楽品でさえないのです。

さて、娘には改めて、地図を用意したうえで、なぜウクライナとロシアが戦争をすることになったのかいっしょに考えようと思います。