生命に序列はつけられない。

こんにちは。BeBRAVE.Sビーブレイブエスの明正明美(みょうしょうあけみ)です。

先日レイトショーで劇場版ラジエーションハウスを見てきました。

2年前にテレビドラマとして放映されていた医療エンタテイメントですが、主人公は「放射線技師」であるところが特色です。医師や看護師が主人公のものは多いのですが、日ごろお世話になっている検査技師たちのような裏方さんに脚光を当てたものはあまりないですから。(薬剤師を主人公にした「アンサングシンデレラ」っていうのもありましたね!)

個性豊かな放射線技師たちの日々の奮闘は、この職業への関心も高めます。

さて、劇場版ラジエーションハウスですが、テーマは「トリアージ」でした。

コロナ禍において、「トリアージ」はメディアでもよく取り上げられ、多くの方がこの言葉を知ることとなったと思います。

元々はフランス語の「triage 選別」からきている言葉であり、医学的な判断で救命の順番を決めるものなのです。

映画の中では、交通事故で3人のけが人が運ばれてきたとき、救命順序について、新人技師の女性が、意識不明のお腹に赤ちゃんのいる妊婦さんをどうして先にしなかったのかと疑問を上司にぶつけます。胎児のいる人は優先すべきだと思うのに…と。

それに対し、上司である技師長は「おまえは神様か?」といさめます。

医師は医学的判断・ルールでそうしたんだ。いちいちそこに感情を入れて判断するんじゃない。神様じゃないんだぞ。

ラジエーションハウスでこのセリフを聞けたことだけでもこの映画をお金を出して見た意味があったと思いました。

コロナ禍において、「トリアージ」は本来的な使い方とはまったく別の意味を持ってしまいました。

医療現場では設備と人員の不足から、誰を救命し誰を救命しないかの判断を迫られる状況が生まれました。本来のトリアージとは違う、明らかに救命による経済的・社会的な得失に従って判断されたのです。

医療崩壊という言葉とリンクして使われたのが「命の選別」です。

ナチズムによる精神障がい者の大量殺人も、生きるに値しない生命という言葉の下に命の選別が行われました。背景には経済の疲弊がありました。

コロナ禍では状況は全く違う。あんな狂気とは違う、そう言えるのか。

お前は神様か?という技師長の言葉は重いのです。

生命に序列はつけられない。

だから生命は尊厳なのです。

ラジエーションハウス映画製作者に感謝します。