こんにちは。BeBRAVE.Sビーブレイブエスの明正明美(みょうしょうあけみ)です。
みなさんはフランスの児童書『わたしの世界一ひどいパパ』をご存じですか?
タイトルどおりの、世界一ひどいパパが出てきます。
女の子の目線で書かれています。
わたしのパパはあまりにもひどいので牢屋に入れられました。
パパはもとは消防士でした。でもある日、帰ってきて言いました。
「クビになった」
報奨金をたくさんもらうために、あちこちで放火していたことがバレたのです。
パパは夜の9時から朝の5時までポーカーをするようになり、最後には一文無しになってしまいました。
パパは麻薬とピストルの所持で逮捕されました。
パパに会いにママと刑務所に行きました。
パパは面会中に仮病を使って看守から拳銃を奪い、私を抱えて刑務所を脱走しました。
パパはベンツを奪って信号を無視してあっという間に高速道路に飛び乗り、(他人の)金がたんまりあるスイスに向かいました。
わたしは逃げようと思えば逃げられたけど、そうはしませんでした。
ひどいパパだけど、最後までいっしょにいようと思いました。
パパはビールを1ダース以上も飲んでいます。
料金所のバーを壊してぶっとばします。
ヘリコプターが上空を飛び、警察車のサイレンが鳴り響きます。
トンネルに入ると車から降り、別の車に乗り込みました。
パパの恋人のイザベルさんでした。
パパは警察をまいて、町でいちばん立派なホテルに泊まりました。
テレビではパパの顔写真と泣いているママの顔が映し出されています。
朝起きたらパパはいませんでした。
パパは私を置いていったのです。
わたしのパパほどひどいパパを知っている人がいたら、ぜひ教えてもらいたいものです。
もうパパには二度と会えないだろうと思います。
また泣き出すかわりに、わたしは鉛筆を一本手に取って絵をかきます。
拳銃を持っているパパ、運転するパパ(他のドライバーを殺しそうになっている)、お酒を飲んでいるパパ、ポーカーをしているパパ、放火しているパパ、パパがわたしやママに体験させたおそろしいシーン、悪い思い出をなんでも描いてみせます。
どの絵もとても生き生きしていて上手なのでおどろきます。
わたしの世界一ひどいパパが、たった一つ、いいものを私に残してくれました。
3作品収録されているうちのひとつです。他の作品にも立派なパパは一人もでてきませんが(立派なママも出てきませんし、そもそも立派な大人がこれっぽっちも出てこないのです)、これはスペシャル級のひどいパパ。
ずいぶん前ですが、厚労省が有名タレントを起用して「育児をしない男を、父とは呼ばない」というコピーでポスターを作りました。男性の育休取得率が、0.4%とかの時代でした。
今は6%ぐらいに上昇したそうです(笑)
20年以上かけて10倍以上の伸びです!すごいです!
最初が低いと伸び率はすごいことになります。厚労省の目標は30%です…
それはさておき、育児をしない男は父ではないのでしょうか?
この世界一ひどいパパは女の子の父親ではないのでしょうか?
答えはもちろん、父親に違いありません。
世界一ひどいパパでさえ父親なのですから、イクメンじゃなくても、イケメンじゃなくても、パパはパパです。
子どもはパパがイクメンじゃないことやイケメンではないこと、立派ではないことを、ママほどには気にしません。
パパとして(あるいはママとして)ふさわしいどうかというのは、世間の善良な人たちが考えているほど客観的には判断できないのです。
いいパパ(ママ)、悪いパパ(ママ)の判断は主観的にならざるを得ず、誰かの主観を感じるのは簡単なことではないのです…
物語の主人公でいうとミヒャエル・エンデのモモでしょうか。
モモになるのは無理でも、多くの人の気持ちはわからなくても、自分の子どもの気持ちを感じることができたらいいです…