産婦人科医・産業医の平野翔大さんが男性のツラさを代弁してくれています

こんにちは。BeBRAVE.Sビーブレイブエスの明正明美(みょうしょうあけみ)です。

熱中症の注意報が出るほど暑いかと思えば、3月並みの気温となったり、温帯の日本にしては珍しく気候が不順です。とても体調を崩しやすいので、暑さ寒さに対応できるよう着るものなどで調節してくださいね。

さて、きょうは、産婦人科医であり、産業医でもあり、医療ライターでもある平野翔大(ひらのしょうだい)さんの著書『ポストイクメンの男性育児 妊娠初期から始まる育業のススメ』についてお話したいと思います。

平野翔大さんHP

この本は男性の育児について書かれたものですが、他の多くの男性育児書と異なるのは、著者が産婦人科医であり、かつ、産業医でもあるという点、そして、それらを踏まえて男性のツラさ、しんどさに寄り添っており、女性の補助的な立場でもなく、かといって、女性をしのぐほどの育児、いうなればパパのママ化をすすめてもいないことです。育児はもともと誰かが一人でできるものではなく、かといって、「社会化」と言ってしまえば、あまりに曖昧で広すぎ、他人事・無関心・無責任になりやすいため、夫婦・カップルなど複数の者が主体となって子育てをするのが自然であるとして、しかし、社会がそれを許さない構造であるという点を現場からの視点で書いてあります。

はじめに、のところで

・男性も育児をすべきなのに、育児をしやすい環境ではないのが日本の男性育児の現状

・男性の育児育休は推進ばかりで支援の視点が欠けている

・育児は女性の文化が根強く、ベビー用品のマーケティング対象は女性ばかり。乳児検診を規定する法律はいまだ「母子保健法」。育休などの法制度だけが大きく進んだ半面、実態となる文化は進んでいない。男性が育児をするのは当たり前という流れができるなか、企業や人々の文化は”女性が育児”のまま、育児支援も女性向けばかりに展開されている。その結果として、取るだけ育休といった問題も出ており、”イクメン”に対しては7割の人が「イクメン嫌い」という現象すら起こしてしまっている。

このように指摘しています。産婦人科の医師がここまで育児政策に踏み込んで言及することはとんどありません。やはり産業医としての実績が大きいと思います。

育児に関することは厚生労働省の管轄ですが、保健医療を扱う厚生省と、雇用関係を扱う労働省が合体した巨大省庁であり、その内部は家庭内離婚、別居状態であると思われます。今現在働く人の9割近くが雇用されています。厚生省が対象とする人はほとんどが労働省での保護対象となる人です。2000年橋本内閣で厚労省に一体化したときからすでにそうです。ですが、育児に限らず、たとえば介護でも、介護保険と介護休業等はそれぞれが旧厚生省、旧労働省でてんでにやっており、介護離職を深刻化させています。数年前の介護休業分割のときに、はじめて、労働省管轄の手引きに、厚生省管轄の介護保険のことが掲載されました。育児については、今年「子ども家庭庁」ができました。

ただ、このようなことはよく言われるように、縦割り行政の弊害なのでしょうか?まとめて一体化すればオッケーというなら、モンテスキューが法の精神で提唱した権力分立は不要なのでしょうか?専制がいちばんいいということになりませんか?才能ある独裁者にみんなお任せしたほうがいいのでしょうか?そんなことないですよね。

一つ屋根の下にいようと、少し離れていようと、遠く離れていようと、目的に向かって協力するには、どうしたらいいか、それが方法論です。

話が逸れましたので平野医師の本に戻ります。

 

目次を見るだけで男性の置かれている状況の苦しさ、息苦しさ、どうしていいかわからないかんじが察せられます…

・何をやっても怒られる…(何を知ればいいのかそれすらわからないから)、父親の悲鳴、母親の本音、すれ違い問題の本質

・むしろいないほうがいい…、育児を通じて夫婦関係が悪化する日本の現状

・父親を苦しめる「三重苦」知識なし、経験なし、支援なし

現状を分析し、問題点を抽出し、最後の章で

「苦しみ、追い込まれる前にできる、父親の心得」「気づいてほしい、自分を守る術」を提示しています。

この本は男性育児に関して、男性のツラさを主に取り上げていますが、いうまでもなく、女性も苦しんでいます。男性も苦しんでいるし、女性も苦しんでいる。赤い靴をはいた女の子のように休むことなく踊り続けることなど誰も望んでいないのです。物語では女の子は靴を脱ぐことができませんでした。でも私たちは踊りをやめて休憩するために、靴を脱ぐことができます。自分が止まれば周りの動きがわかります。SNSで情報をチェックする代わりに、1冊の本を手に取って文字を数行だけでも追ってみてください。文字は人によってはゆらゆらしたり、かすれたりするかもしれませんが、それほど大きくは動きません。文字が、しんどいときは音声で聞いてみてください。

では、BeBRAVE!