奨学金のなにが問題なのか。本当に悪質な学生ローンなのか。

こんにちは。BeBRAVE.Sビーブレイブエスの明正明美(みょうしょうあけみ)です。

お子さんの教育資金について、多くの親御さんが預貯金や保険、投資商品などで準備されていることと思います。しかし、なかにはそういった余裕がなく、いざ中学卒業、あるいは高校卒業という段階になって、資金繰りに困る方もいるかと思います。高校は私立も無償化になってきていますし、自宅からそれほど遠くない学校に通う場合がほとんどですからなんとかなるものですが、大学や専門学校となると、必要となるお金はけた違いに多くなります。

そこで多くの親御さん及び進学する本人が当てにするのがいわゆる「奨学金です」

この「奨学金」、教育資金の準備のない家庭にはおおいに助かる制度ですが、問題も多くあります。インターネット上にあったある方の、奨学金に対する考え方に、少し気になるところがあったので、そのことについて書きたいと思います。奨学金は悪質な学生ローンであるという批判に対する反論として書いてありました。

午堂登紀雄(ごどうときお)さんという、米国米国公認会計士(CPA)の資格を持つ経営者の方です。

午堂さんは、自分が奨学金を得て大学に進学し、今現在の地位のある方で、奨学金に対して好意的なバイアスがあること、底辺から這い上がってきたため生存者バイアスがあることを認識しています。奨学金に苦しむ人が多くいることもわかっています。そして、そのうえで次のように指摘しているのです。

奨学金は借入金であることを知らないのか、借り過ぎである自覚はないのか、借金してまで進学する以上元を取るべく努力を学生時代にしなかったのか、就職した会社の給与が低いなら家賃やスマホ代など低額にする努力はしないのか、返済が苦しいなら、返済猶予制度をなぜ使わないのか。

どれももっともな指摘であり、返す言葉はありません。正論です。

しかし、午堂さんは責めるだけではなく、希望のあることも言っています。

今は返済が苦しくても、20代はまだまだ若い。挽回のチャンスはまだまだあるのだと。そのうえで、奨学金を借りて進学することについて、厳しい考えを持っていることを伝えています。

日本の大学に、借金してまでいく価値はあるのか。確かに、高学歴と能力は比例する傾向はあり、高学歴の人ほど起業するし、成功する。それは学ぶ姿勢が違うからであり、積極的に勉強する人はビジネスに不可欠な能力を得やすいからである。つまり、難関大学ならまだしも、定員割れするような大学に借金してまで行く必要性がそもそもないのではないか。学ぶだけなら海外の大学もあるし、無料の講座や通信制度などいくらでもある。

ここが午堂さんの考え方の論点であると思われます。そして、最後に、アメリカで学んだ午堂さんならではのユニークな持論が紹介されています。

高校を出たら人生は本人だけのもの。親がお金を持っているかどうかは関係ない。親が子の学費を出さなければならないなどと決まっているわけではなく、親が出すべきだという世間の常識、固定観念に過ぎない。他人が考える「こうすべき」に自分が合わせる道理などない。私が親の役目だと考えているのは、子が自分の足で立って歩けるようになるためのサポートであり、どんな状況になっても乗り越えていける土台を作ることです。だから高校までは、子がやりたいことを応援し、没頭できる環境を与えます。そのためのお金は惜しまない。でもそれ以降は本人自身で自由に人生をデザインさせようと思います。法律上も令和4年度から18歳で成人になり、契約の当事者にもなれますしね。

どうですか?面白い方ですね。

私は午堂さんのこのような考え方に賛同します。

ただ、午堂さんのレポートには書かれていないこと、抜けていることもあります。奨学金は当事者である本人や親の意識だけの問題ではないということです。午堂さんは、奨学金は悪質な学生ローンであるという論調に対する反論としてレポートを書いていますので、仕方がないのですが、やはり意識的に目を背けていると思います。

奨学金の良いところは、学びたいがお金のない学生を支援するところですが、多くの学生が学びたくもなくお金もないのに奨学金という高額な借金を背負って、日本に多数存在する定員割れしているようなレベルの低い大学でまったく学びもしないでバイトに明け暮れている、奨学金を返せるような仕事にも就けない、それが問題なのです。奨学金を利用したからそうなったのではなく、廃止が当然のような大学に奨学金が使われているのです。

以前、ファイナンシャルプランナー勉強会で講師をさせていただいたときの資料も参考にしていただけたらと思います。

fp野々市明正「奨学金を知る」

以前に書いた奨学金の記事「奨学金を借りる前に制度を理解し、なんのためにお金を借りて進学するのか考えよう」も併せてお読みいただけると嬉しいです。

奨学金は本人の意思だけで片付く簡単な問題ではないと思います。