赤ちゃんの夜泣きでママが眠れないのは当たり前ではありません。過労死と同じことが起きます。

こんにちは。BeBRAVE.Sビーブレイブエスの明正明美(みょうしょうあけみ)です。

 

きょうは赤ちゃんの夜泣きとママの心身の健康についてお話をします。

私はかつて、乳児院という3歳未満の乳幼児ばかりが暮す児童養護施設に保育士として勤務していたことがあります。

夜勤は月に4~5回ほどでした。(介護施設に比べると少ないです)

自分が夜勤のときに寝てくれない赤ちゃんがいると、あ~運が悪かったな…大変な夜勤だったな、と思いました。

施設の生活は良くも悪くも規則正しく、日課がきっちり決まっています。入浴日や時間、食事の時間、起床就寝の時間が変わることはめったにありません。お昼寝も同様です。

遊びもあらかじめ決まっています。運動不足、昼の活動不足というのはそうそうないのです。

寝かしつけ方法も同じです。(自分流とか、ユニークな寝かしつけ法とかを勝手にやったら先輩から叱られます)

添い寝とかはもちろんなくて、月齢に応じて多くの子が自分だけで、ミルクを飲みながら、背中をトントンやさしくたたいてもらって眠ります。

30人ぐらいの乳幼児に対して保育士や看護師などの夜勤者が2人だけですから手をかけた寝かしつけはできないのです…

一般家庭の赤ちゃんに比べれば生活環境が整っていますが、それでも、生後6カ月過ぎても夜なかなかまとまった時間眠ることができず、何度も泣き出す赤ちゃんがいます。

そんなときの夜勤はへとへとです。

朝方の3~4時は疲れのピークです。

夜勤が終われば家に帰って眠れることがわかっていても、体がツラかったです。

拘束時間は長くても17時間程度で、休憩や仮眠もあります。

翌朝9時に終わる仕事は「明け」といって、「明け」の翌日は原則お休みです。

月に4~5回の夜勤のうち、こんなことは1回あるかないかです。

それでもツラいのです。

仕事としてお給料をもらっていても、夜眠れないことや、泣き続ける赤ちゃんの相手をするのがツラかったのです。

産後のママのツラさというのは、仕事でやる赤ちゃんのお世話でのツラさとは全く異なります。ツラさの質も量も違うのです。

多くのママは1人の赤ちゃんをお世話していると思いますが、2人で30人の赤ちゃんをお世話するのと、赤ちゃんは1人でも、ママがたった1人でお世話するのとでは全然違うのです。1人当たりが担当する赤ちゃんの数は施設では10~15人です。施設のほうが大変に見えますが、実は違います。2人いればトイレに行くことも休憩をとることも眠ることもできるのです。仮眠中はよほどのことがない限り呼ばれることはありません。

「たった1人」で赤ちゃんをお世話するというのはそれほど大変なことなんです。

過度の睡眠不足には、どんなにしっかりした意志の強い人でも、どんなに体力のある人でも耐えることができません。

過労死問題の研究でも、特に過労自殺では睡眠時間との因果関係は明らかになっています。

過労死と睡眠時間(日本臨床睡眠医学会)

産後うつの原因はホルモンの影響だとかいろいろあると思いますが、睡眠不足が要因として大きいと思います。

生まれたばかりの赤ちゃんのお世話をするのはママの仕事。(これを無償労働といいます)

家にいるのだから家事ももちろんママの仕事。(これも無償労働です)

夜眠れないといっても仕事に行っているわけではないのだから差し支えないのでは?

このような固定的な男女の役割分担と女性軽視がまだ根強くあります。

そして、赤ちゃんは夜泣きをするもの、ママというのは眠れないのが当たり前、このような非常識がまだまだ常識として通用しているのです。

有償労働であれ、無償労働であれ、過度の睡眠不足が続けば正常な精神状態ではいられなくなります。

5年前に過労自殺した電通の高橋まつりさんは、健康で優秀な、自立心のあるしっかりした女性でした。

電通が業界では悪評高い過重労働の会社であることをわかったうえで、シングル家庭で育ったまつりさんはお母さんを早く助けたくて、給与の高い会社に就職したのです。

いろんなことをがんばってきたまつりさんは、仕事のことも、睡眠時間が取れないことも、がんばって克服する自信があったのだと思います。

でも「眠れない」という現実は意志の力など精神論では太刀打ちできないのです。

ママの睡眠不足も同じことです。

理由がなんであれ、「眠れない」ことが続けば人間は壊れてしまいます。

ママが眠れないのは当たり前なんかじゃないのです。

世の中の非常識な常識に対して、そうじゃない!って、声をあげている専門家がいます。

書籍もあるし、ネットもあるし、リアル相談もあります。

本を読んでみてください。

インスタやブログなどを見てください。

実際に相談室に行ってみてください。

赤ちゃんがちゃんと睡眠のリズムを作れるようにトライしてみよう。

どうしても寝ないならパパや友人など、誰かと交代しよう。

パパ休暇とか、男性版産休(出生時育児休業)=来年9月あたりからパパ休暇に代わって運用される制度)とか、ママの出産後8週間に男性の育休をすすめているのは、この時期がママにとってすごく大変でツラい時期だからです。

労働基準法では、産後6週間は理由を問わず、問答無用で女性労働者を働かせることができません。罰則があります。

赤ちゃんのお世話のためではありません。

家事のためでもありません。

赤ちゃんの兄弟姉妹など、子どもの世話のためでもありません。

女性の体の保護のためです。

労基法がそのように規定しているということは、雇用されているかどうかに関係なく、女性の体がこの時期、本質的に休養を必要としているからです。

パパの育児休業はママのためにあるのです。

 

参考書籍と参考サイトです

書籍   「マンガでよくわかる 赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド」

     「子育てで眠れないあなたに」

Instagram   ねんね相談室PiEACE